---------------------------------------------------------------
[念深奥−コックリさんはやってない−]−後編
---------------------------------------------------------------
白石は二階についてすぐ、謙也の手を振り払うと洗面所に駆け込んだ。
せり上がってくる圧迫からくる嘔吐感に耐えきれなくなったのだろう。中から吐いているのだろう咳き込む声が聞こえてきて酷く苦しそうだ。
白石がそうなる時、謙也はいつもどうしたらいいかわからない。
こういった時の対処法は、侑士の方が心得ていた。
そのため白石はよくこういうときは侑士を頼ったし、侑士も訳知り顔で白石を面倒見た。
侑士が大阪にいたのは短い期間だったが、白石を下の名で呼ぶくらいには彼らは親しかった。
だから謙也はたまに、職員室などで教師相手に白石が自分を“忍足”と呼ぶと居心地が悪かった。
どうやら他のメンバーとは途中ではぐれたらしい。狭い一軒家でどうはぐれられるのか不思議だが、今のこの家は普通ではない。そういう場合、白石が言うのは、自分の思う普通に当てはめてはいけないということだった。
唯一見失わずついてきた千歳が洗面所を覗いて、そのまま足を踏み入れた。
吐き疲れたのか、余程この今の家が恐ろしいもので、霊感の強い彼に毒なのか。白石は倒れ込んでいた。名を叫んでもいい状況だったが、彼は叫ばずに横になって倒れている白石を抱き上げた。
顔色が酷く、死人のような色の白石への対処を心得ているわけでもないのに、千歳は白石を抱えたまま洗面所を出ると二階の窓は開いてんかと謙也に聞いた。
「開いてへんと思うな…多分」
そういう経験はないが、多分ここで開いていて逃げられる、という都合のいいシーンはないだろう。
「やろな…」
「ち…とせ」
「なん? 白石。少し休め。しゃべらんでいい」
「……あかん……なんや…おる」
途切れ途切れの忠告のような声は、すぐ聞こえなくなった。
「白石?」
のぞき込む。蒼白な顔はそのままに、彼は既に意識がなかった。
「余程ここあかんかってんな。移動しよ。どっか、部屋」
千歳がよっと声をあげて白石の意識のない重い身体を抱え直す。
「そやなぁ…そもそも金ちゃんの家。どこになんの部屋があるかほどしらんけど」
… ガチャ
「……千歳? なんか音」
背後でなった不思議な音に、謙也が眉をひそめる。
千歳は前の方にいる。
振り返った彼が、謙也の名を呼んだ。
「え?」
疑問を浮かべた瞬間腕を捕まれ、飛び上がるほどに驚いた。
背後にいるのは、鎧の大人ほどの大きさの人形。それが、動いている。
「…いるって、こないな意味か!?」
「謙也伏せ!」
千歳が叫ぶ。謙也がその通りにしゃがみ込むと、千歳の足が勢いよく鎧人形を蹴り飛ばした。
「今のうちばい!」
「あ、ああ、助かった!」
急いで千歳と謙也は近くの扉に飛び込む。
扉を閉めると、ようやく静かになった。
「この家、どないなっとんや…」
「少なくとも、白石の言うこと聞いた方がいいけんね。…もっとも」
抱きかかえていた身体をちょうど飛び込んだ部屋にあったソファに横たえる。
「白石の意識が戻らんことには…」
「……金ちゃん、やっぱなんか取り憑いてんやろか」
「白石が言ったことばい。信じるしかなか」
「そやね…」
部屋にはソファとテレビ、壁に飾りのボーガン。それから絵画。
「武器が欲しいわ。金ちゃんに向けられるかは別にして」
「そうね…これとか」
壁に飾られているボーガンになにげなく千歳が触れる。
瞬間、ボーガンが飛んだ。比喩表現ではない。文字通り宙に飛んだのだ。
「……は、はは。ほんまなんでもありのお化け屋敷ばい…ここ」
「ぼーっとしとんな千歳! 伏せろ!」
ボーガンが千歳に向かって射られた。
放たれた矢から反射で蹲って交わす。
だが宙に浮かんだままの矢は、ふわりと浮かぶとまた千歳に向かって狙いを定めた。
「…ッ!」
そして高速という速度で再び放たれる。
紙一重でそれを交わした矢先に、宙に浮かんだままのボーガンがもう一つの矢を千歳めがけて放った。
「…しもた…ッ!」
至近距離。交わせへん!
「千歳!!」
駄目だ、食らうと思った瞬間、千歳の眼前に飛び出して身を張ったのは意識がないとばかり思っていた白石だった。
その目の前で、ボーガンの矢はぽたり、と床に落ちた。
「………」
白石はそれで力つきたというように、床に倒れるように座り込んだ。
「白石!? 怪我、お前怪我は!?」
「ない…大丈夫や……」
息も絶え絶えという風情で、彼はそう答える。
「今のも、自信ちゅーか、確信あってやったしな…」
「確信…?」
「多分、俺は殺されへんやろて…」
「なんでや…」
「金太郎。俺見て“旨そうや”言うたやん…。金太郎、多分なんや動物霊の類に憑かれとる」
「……なんで、動物霊ってわかると?」
「人間の霊やと、こう……声が聞こえんねん。訴える恨みとか悲しみとか。
動物霊の場合、…なんや感情のみで、声がないんや……金太郎を介して以外、声は聞こえへんから、多分そうや……。
そんで、動物の霊は宿主をほしがる。……大抵、俺はそういうのに好まれるからな…。
多分、次の宿主候補や。殺されへんと確信めいてやった……」
金太郎は、むしろ無敵体質っぽくて長く取り憑いていられんのやろ。
「………はよ言え」
寿命縮んだと思た。と言う謙也に、白石は青い顔に笑みを浮かべて謝った。
「ほな、……二人ははよ行きや」
「……なんでとね?」
白石の言葉に、千歳が疑うようにその頬をなでた。
「狙いは俺や…。俺から離れれば、…二人は安全に逃げられる筈やねん……」
途切れたような訴え。白石は立つことすら出来ないような姿で、必死に言う。
「白石」
謙也はしかし、その身体を引っ張って立たせる。
「謙也…?」
「悪いな」
言い置いて、謙也はその腹を思い切り殴った。
「……ッ…………ッは……」
叫ぶ気力もなかったのだろう。まともに食らった白石が、その場に崩れ落ちた。
「阿呆。…自分置いて、見捨てて逃げられるか!」
「………」
千歳はそれを予期していたのか、謙也に同意見なのかなにもとがめず、白石を抱き起こした。
「……はは……そういうて、思た」
「なら言うな。……お前のそういうとこ、俺は嫌いや」
「……うん、知ってる………ちゃんと、知っとるよ……有り難う、謙也」
そこで礼を言われるとくすぐったくて、謙也は視線を逸らした。
… がた … がた
物音には、嫌な予感しかしない。
その部屋にある、絵画やボーガン。テレビが動いて三人を部屋の隅へ追い込んでいく。
「この部屋もあかんな…逃げるで!」
千歳が謙也の言葉に応えて、白石を抱えると隣の部屋に駆け込む。
扉を閉める。いつまで、これが続く?
隣の部屋は勉強部屋だった。
… 謙也〜 … 白石〜
遠く、後輩の声が聞こえる。
まずい、近い。
「……ここ、行き止まりの部屋か?」
「ベランダから向こう行けそうやが、白石抱えてはいけへんな」
「……千歳、俺たちで金ちゃん足止めして引きつけるで」
まだ来ないことを確認して、謙也は押入をそっとあけた。
「白石、すぐ戻ってくるから、待っててな」
「……ああ。期待せんで待っとる……」
「縁起ないこと言うな。阿呆」
白石の身体を押し入れの布団に隠すように入れて、押入の襖を閉める。
「………行くで」
「ああ」
足音がする。
だが扉を開けて入ってきたのは、金太郎ではなくあの鎧人形だった。
「……な」
「おい、なんか武器!」
側にあったランドセルで鎧人形を殴り倒す。
だがその鎧人形は持っていた刀で、二人をベランダに追いつめた。
「……白石は、大丈夫か」
「今のとこ気付かれとらん。多分大丈夫ばい」
小声で交わしあって、もう逃げ場が部屋にないことを悟ると一斉にベランダに飛び出てベランダづたいに隣の部屋へ逃げ込んだ。
鎧人形が追ってくることを察して、安堵した。とりあえず、これなら白石は大丈夫だ。
押入の中は暗い。
なにより息苦しい。また、吐き気が襲う。
この家はあまりに肺が圧迫されて、呼吸がまともに出来ない。
苦しさをかくしても謙也たちには見抜かれる。
「白石〜」
金太郎の声だ。
身が震えた。
今の自分の、すぐにでも倒れそうな身体で逃げられる自信はない。
布団に預けている身体の体重すら支えられない。
布団に体重を預けていると今にも眠ってしまいそうだった。
「…白石。おらん」
声だけは、いつもの後輩なのに。
「あ、此処か!」
その響きに、肝が冷えた。
しかし別の扉を開けたらしい。襖の向こうから光は見えなかったからだ。
「あ、ここちゃう。こっちか〜。ちがうなぁ…。こっちかぁ?」
扉の閉開音が聞こえる。見つかるのも、時間の問題だった。
「あ、此処やな!」
間近で聞こえた。まずい。そこに、いる。
がらりと押入が開かれた。
息を殺して待つ。
きょろきょろと見渡したらしい後輩は、やがて落胆の息をついた。
「なんや…おらへん。この部屋ちゃうんか」
言って、押入の戸を閉めた。
思わず息が漏れた。安堵だった。
動きにくい押入の中で、携帯を出そうとポケットを探る。
どうやら布団の隙間に身体を入れられたおかげで見つからなかったらしい。
「……」
携帯を取り出し、短縮ボタンを押す。
金太郎が既にこの部屋にいないと確信しているから出来た。
「……千歳?」
『白石? 大丈夫とね?』
「大丈夫…。ちょっと、協力したってや………」
『わかった。さっきの部屋、戻る』
「すまんな……」
言うだけ言って、切った。
押入から這い出すと、隣の部屋の文具用品を借りた。
紙とペンと、十円玉。
まもなくやってきた千歳は、謙也より冷静なのか、なんか呼ぶのかと聞いた。
「大抵、…失敗するんやけどな……。俺がやると必ず近所のお稲荷様が憑依しよる…。
この際、神頼みや…………」
「大丈夫なんか……? 白石まで金ちゃんみたく…」
「大丈夫や……俺に取り憑く稲荷様は、善良やから………」
言う側から呼吸が苦しくなるのを感じた。もう、意識が持たない。
「やるで……」
十円玉に指を乗せて、おきまりの言葉を紡ぐ。
“私のちからがひつようですか”
「……必要や……俺の身体、貸したる。後輩、止めたって……」
白石がそう紙に向かって言った瞬間、その身体が一度だけ痙攣した。
「白石!?」
「…………」
ゆっくりと、その身体が立ち上がる。
「………」
地震のように、床の揺れる気配。
ボーガンがまた、宙を舞って謙也に狙いを定める。
「またかいな!」
「下がれ謙也」
聞こえた白石の声は、さっきまでの不調が嘘のようにはっきりした響きを持っていた。
放たれた矢の前に白石が飛び出して、その矢を簡単にパシッと掴んだ。
そのまま矢をボーガンに向けて投げ返す。その矢にボーガンが射られて沈黙した。
「………しら、いし?」
「ああ、なんや」
「……白石、とね?」
「ああ。金ちゃんみたくはなってへんから。安心せえ」
微笑む不敵さがいつもの彼で、やっと二人は安堵した。
「今のは……」
「稲荷様の力借りたから、…多少人間離れの技も出来るっちゅーこと」
「……白石、まさか今んは」
千歳が悟ったように呟いた時、開かれたままの扉の向こうで光ったのは、刃だった。
二本の、宙に浮かぶサーベル。
「千歳、謙也伏せとけや!」
「待っ…」
サーベルは意志があるように一直線に白石目掛けて飛翔した。
(嘘や! 白石が言うた! 自分は殺されへんはずやって!)
飛びだそうとした謙也を白石の足がけ飛ばして止める。
「さっき俺殴ったやろ? 借り、返しとく」
「やめや白石―――――――――!!」
謙也が目を見開いたまま、白石が串刺しになる姿を思い描いた瞬間。
サーベルは二本とも宙で止まった。
白石の両手が、その切っ先をあっさり掴んで、その場に投げ捨てた。
「……しら」
「ほら、大丈夫やったろ?」
「……」
笑顔で言う彼に、謙也は足が立たなくなったようにへたりこんだ。
「俺、………マジあかんかって思った」
「はは、堪忍」
「……白石、今んの、……稲荷様の召還儀てやろ?」
俺の方が死ぬかと思ったと呟く謙也を余所に、千歳が真顔で言う。
「よう知っとるな」
「かつて神社境が栄えていたころ、巫女が自分を代価に神をその身に降ろす行為。
…今はただの参拝に変わったけど。それ、……巫女はそのまま身体を神様に喰われるて聞いた」
謙也がはっとしたように顔を上げる。まさか。
「………さて、ここまで本格的に力借りたんは初めてやし。ほんまに喰われてまうかもな」
白石は明日の天気を告げるように答えた。
「……嘘やろ……白石?」
「嘘やったら俺ももっと気楽に力借りんのやけど」
「…………ちとせ。嘘、よな……。これ終わったら、白石も、おるよな……?」
「………白石」
その立つ背中に問いかけるように、呼んだ。
今なら、まだ、もう。
彼は、人じゃない領域にいる。
届かない。動かせない。
なんでも可能にする力の代償は、己。
「……………無事」
なんとでも罵倒してやりたくて、けれど彼はその刹那すら笑うのだと思った時、千歳にはもうなにも言えず、目を伏せてささやく。
「……無事、戻ってこれたら、殴らせや」
「………うん」
白石は矢張り、帰って来れないことを前提に頷くのだった。
白石、明るい声が今はやけにこわばっている。
「白石、なに、おんの?」
金太郎だ。扉の向こう。包丁を持ったまま、怯えたように彼を見上げる。
「ん? 金太郎には、わかっとるんやない?」
「…………」
後輩はまるで毒手を出された時のように怯えて顔を伏せる。
「そういえば、なして……」
白石は命を狙われたのか、と呟きかけた疑問は謙也から。
「ああ、俺には今金太郎に寄生しとる狐よか、高位の稲荷様が乗り移っとる。
……邪魔なんや。自分を祓いかねん狐様が。それを宿した俺が。
自分が下位である以上、退けられへんから俺はもう宿主に使えへん。
てっとりばやく邪魔やから身体ごと狐様殺してしまお。…ってとこ?」
「ってことは…!」
「ほな、………………死んでや、白石」
顔をあげた後輩が前につきだして握る包丁の刃に白石の顔が映った。
刹那、動物そのものの雄叫びをあげた後輩の身体が飛び上がる。
宙を舞って、包丁を一直線に白石に振り下ろしながら。
「白石! やめや金太郎!」
「金ちゃん!」
千歳の声も、謙也の声も意味をなさない。
その中で、白石はただ刺せ、というように腕を広げた。
飛び込んでくる後輩を、抱きしめようとするように。
「金太郎」
名を呼ぶ。
笑う。ここに、おいで。
戻って、おいで。
この声が届くなら、戻っておいで金太郎。
微笑む顔が覚悟のように悲しく緩んだ。
その瞳に自分が映った瞬間。
後輩は初めて我に返ったように呟く。
「白石…」
手から包丁が落ちて、なにもない床に刺さる。
彼の身体だけがそのまま白石の腕の中に抱き留められた。
「……白石、……ワイ……白石」
「………うん。ええよ。ええから」
そっと、床に着く足。
抱きしめる、暖かい人の身体。
泣きそうになる。ずっと怖かった。自分が自分でなくなって。
「…白石…!」
必死にすがりついた。泣きついた。
彼は矢張り、笑って茶化すのかと思ったが、酷く優しい声が頭上で降った。
「うん」
彼は、とても優しく、慈しむように見下ろしている。
怒っても、怖がってもいない。ただ、当たり前のように自分を自分と見ている顔。
「……お帰り、金ちゃん」
その声に許されて、戻されて、すがった。
泣いた。
その腕と声が優しくて、泣いてただ名を呼び続けた。
遠くで狐の咆吼がする。
金太郎の身体から一筋、黒い霧が上って、消えた。
「……ど、どないなっとんのや、金太郎さんには追いつけへんし」
「あ…」
扉の向こうから聞き慣れた声。
「あ、謙也に…金太郎さん! 白石!」
「ユウジ! 小春!」
「あ、金太郎さん………は元に戻ったんですか?」
白石に抱きついている後輩を見て、財前がどこか暢気に言った。
その背後で銀が手を合わせた。
「…………白石」
千歳が名を呼ぶ。
「……ん。」
彼は少し照れたように笑うと、すまんと一言謝った。
「白石…!」
「……ちょっと、もう、限界っぽい。…ええか金太郎」
呼びかけに答えるように見上げた後輩に笑う。
「自分の所為とちゃうから、ちゃんと笑ってな」
そう言って、彼はそのままぱたりと床に倒れた。
息を引き取るように倒れて、動かなくなった。
「蔵リン!」
「白石!」
一氏と小春が飛び込んでくる。
金太郎が側に倒れ込んだ人を呆然と見下ろす。
「……嘘や、白石」
謙也が呟くが、千歳には嘘と言えない。
あんな知識、なければよかった。
物知りの祖母から聞いた話だったが。
「白石………」
金太郎が、その身体を一度揺すって、泣くように零した。
「やから、……俺風邪人ちゃうんやけど」
白石の家に押し掛けた謙也と千歳は、起きあがろうとする白石の上に金太郎をのっけて、防止してからそのうち小春たちも来るから、おとなしくしとけとにらむ。
「……無事やったんやし、…許してくれても」
「お前、先に無事やって言わんかったばい。罰くらい受けや」
「…千歳」
白石が倒れた後日、意識がなくなったくらいで健康体の白石を見舞うと白石の母はころころと笑っていった。
あの子、昔からよくあの狐様と話してるの。よくそこの神社にも行ってね。あの子にはおじいちゃんの墓入札があるから、平気なのよね。と。
墓入札とは形見の別名で、呪い道具のことだ。魔よけや強い守りになる。
だから白石は稲荷を身に降ろしても少しくらいなら大丈夫だったのだ。
それをわかっていて降ろしたのだが、面倒で言わなかったらしい。
その後、さすがに無茶をした代償で身体の節々が痛んで起きあがれない白石を見舞って謙也と千歳は仕返しとばかりに彼に寝たままでいることを強要する。
白石も起きあがる力がないのは事実なようで、身体の上の金太郎をどかせない。
あの猫は、丁重に金太郎が弔った。ショックだったようだが、この後輩は立ち直る強さを持っていた。
「そういえば、なんで金ちゃんは狐なんかに取り憑かれたんと?」
「多分、……金太郎この間稲荷神社の十二個ある鳥居全部くぐった所為。
金太郎の家仏教やから、仏道の家の人間は稲荷に嫌われるさかい」
金太郎の下敷きになりながら、白石が律儀に答える。
「……で、神社の稲荷には許してもらったけど、ふらふらしてた狐の浮遊悪霊に取り憑かれたんか。災難やなぁ」
「俺も災難やと思うんやが…金太郎、重い」
「えー? 千歳の命令やー退けへん〜」
「……金太郎はほんま素直ねー」
俺より素で千歳をとるんやな、とつぶされながら呟いた白石を見舞いにユウジたちがやってくる。
後輩が部活に復帰した代わり、しばらく部長が休むことになりそうだった。
後書き
これはある意味かなり前に売ってた知る人ぞ知るホラーゲーム、クロックタワーゴーストヘッド
の一章のパロです。
一軒家で呪われた女の子が包丁片手に襲ってくるというやつ。さしずめ金ちゃんがそれ。
私はプレイ当初なにも知らずに飾ってあったサーベルをクリックしてそれに刺されてゲームオーバー
になり、見ていた友人に大層馬鹿にされました(ボタン連打して逃げろよ!と)
そんな私はクロックタワーの最新作を二周コンプしました…。
(いえゴーストヘッドもコンプしたんですがね)
これの本編で白石は結構重要な役回りなので主役から外そうと思ったんですが(本編であまり出番のない
キャラをこのシリーズでは主役にしていくつもりだったので…でも氷帝編の日吉はめっちゃ出番あるしな…。
立海の柳も出番あるし、未アップだけど青学編も乾出番あるしな…。そして多分六角編は佐伯が主役…。
みんな出番ある人たちじゃん…所詮欲望に勝てないってことなのか)やはり霊感持ちははずせませんでした。
どうでもいいけどこういうゲームは隠れて相手をやり過ごす時が一番ドキドキするよな…と白石が押し入れに
隠れるシーンを書きました。
戻る