CROVER LOVE

CROSS LOVE番外@






 試験前のある日、三年のレギュラー全員で、白石の家にお邪魔した。
 勉強会だ。
 主に呻るのは、謙也と一氏。

「あー、わからん。白石、世界史のええ勉強方法ないか?」
 謙也の言葉に、白石は教科書をめくる手を止めて、微笑んだ。
「ほな、教科書開いて」
「うん」
「その下に、ノート用意して」
「うん」
「したら、最初から最後まで、教科書全部ノートに丸写し」
「はあっ!?」
「教科書全部覚えたら楽勝やもん。
 ほら」
「そんなん全然効率ようないっ!」
「謙也、わがままばい」
 白石の寝台に一人、あぐらをかいて座り、その膝にノートを開いて勉強しているらしい千歳が、シャーペンを動かしながら言った。
「普通の意見や!
 なんやそのガリ勉方法!」
「謙也くぅん?
 相手は白石蔵ノ介よ?
 そういう『お手本』勉強方法大好きなのよ?」
 それはそうだが、もっといい方法があるだろう。白石なんだから。
「大体、白石はなにしてんねん」
 白石は始まった時から、教科書を読んでいるだけだ。
「教科書を読んでるんや」
「どこが勉強?」
「暗記しとるんやけど」
「は?」
「謙也、白石はな、教科書は一回最初から最後まで一字一句飛ばさずに読めば、それで暗記出来る頭しとんねん」
 去年同じクラスだった小石川が言う。
「マジか!?」
「マジや。普段、テニスに時間全て費やしとる白石の成績、トップ5から下がったことないやろ」
「えー…」
 信じられない謙也に、白石は不意にクスッと笑った。
「謙也、お前の教科書、一回見たことがあったやろ? 俺」
「あったっけ…?」
 白石はまず忘れ物をしない。貸したことも一緒に見たこともない。
 だから多分ちらっと、本当に一瞬見ただけのことを指すのだろう。
「歴史の教科書の、52ページの、12行目の『半蔵門』のとこの右横。
 『光と明日デート。遊園地と映画館』てメモ書き。遊園地に二重丸しとる」
「えっ!?」
 謙也が慌てて、そのページを開く。
 確かにそこのページ、行目に、そのメモ。一字一句間違ってない。
 それも、本当に『半蔵門』のところ。
 かなり前にやったページで、デートもかなり前のことだ。
「…ほんまや。ほんまにこいつ、記憶しとる」
「な?」
 小石川が流石、と呟く。
 謙也が不意に寝台の上の千歳を見上げた。
「お前はなにやっとん」
 千歳は成績がいい。しかも、ろくに授業に出ないのに。
「数学の応用問題、自分で作って、といとる」
 確かに手元には、膝に乗せたノートと数学の教科書。
「お前、なんで成績ええん?
 授業おらんのに。まさか、予習復習しとらんやろ」
 謙也が少し、笑って言うと千歳は、軽く考えてから「しとる」と言った。
「予習復習はしとるよ」
「えぇっ!?」
「な。白石?」
 驚く謙也を余所に、千歳は何故か白石に振った。白石は千歳を振り返らなかったが、顔が首から上が真っ赤だ。
「え…?」
「白石が、ただでヤらせてくれんけん、予習復習したらヤらせるって」
「千歳っ!?」
 白石は真っ赤な顔で千歳の口を塞ごうとしたが、遅かった。
 千歳は人がいいとは言えない笑みを浮かべている。
「守ってから、襲うんやけん、俺は平和主義ばい」
「…〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
「謙也も、光に言うたらよかよ? 勉強してから。
 勉強間違ったごとに、ヤる回数増やせば間違い減るんじゃなか?」
「え、お前っ!?」
 謙也まで真っ赤になった中、石田や小石川、小春や一氏は黙々と教科書に向き合っている。取り敢えず関わるな。バカップルに関わって、得はない。全員の意見だった。










 2009/06/03