R2
rabbit rose
実録1→→→[その時彼女は]
「……………あ、」
随分、がらんとしている教室だ。
それもそのはず。私も友人も一時間目の講義は取っておらず、要は暇だった。
そういう場合は大抵大学のコンピューター室で暇潰しにネットをやっている。
それから頃合いを見計らって二時間目の講義に使う教室に向かうわけだから、普通に講義を終えて来る学生よりは来るのが早い。
その教室の扉は予め開いていて、中には見知らぬ学生が一人、入ってきた私達を一瞥してまた前を向くだけだ。
「まだいないねぇ(同じ講義を受けている他の友人達が)」
「…うん」
私の傍らで軽く頷いた友人と、前から六番目くらいの席に座る。
が、すぐに友人が席を立った。他の友人達はまだ来ていない。ので何事だろうと声を掛けた私の視線の先で、友人は一言。
「TV」
と答えた。
その教室には、普通の家庭にもあるような小さなTVと、大きな画面のTVが一台ずつある。友人が向かったのは大きな画面のTVの方だ。
彼女はそのTVがついていると言う。
けれど、その画面は真っ暗に沈黙しており、傍目には電源が落ちているとしか見えない。
音もなければ、外部入力状態のような薄明るい光も宿っていない。
おまけに電源のスイッチの部分は机に隠れていて見えない。誰が見たって電源の落ちたTVだ。
だがしかし、彼女は言い張る。
「電源がついている」
ついてないだろうと言う私に構わず、友人はTVの前へ行き、何かを操作する。と、画面が一瞬揺らいで、バチンという音がした。画面は再び沈黙する。
「ほら、ついてた」
という友人の至極当たり前のような声。
しかし、私には先程の画面も今の画面も、なんら変わりのないものに見える。
判らない。
「……なんで判るんだアンタ」
「え? でもそんな感じだったけど」
「何処が?」
「…いや、教室に入った時に、『あ、あのTVついてるな』って」
「だからなんで?」
「いやなんか音がするの。『キーン』て感じで。ついてるTVが判るんだよ」
「………………………耳鳴り?」
「いや違う。そうじゃなくて」
「電波?」
「違うよ…。そういう感じがするんだって。ひらっち(仮名)わかんない?」
わかんないから聴いてるんだよ。
電波でもない。耳鳴りでもない。なのにTVがついているのが、どのTVかまで判る。
傍目で見ている分には立派な電波系だ。
しかし彼女は言い張る。
「普通判るって」
だからわかんないんだよ。
「だから入った時に判るんだよ。絶対判るって」
「わかんないよ。おかしいわソレ!」
「いや判る。絶対判るよ。なんでひらっちわかんないの」
「私にすればなんでアンタは判るんだ」
「判るから」
「それが理解できないんだよ」
そんな会話をエンドレス。
やがてやってきた他の友人達に同意を求めれば、彼女らも判らないとのこと。
しかし彼女は判るらしい。私には判らない。判らない物は判らないのだ。
↑という体験を大学にてしてきました。
やっぱわかんないです。判る人いますか。いたら吃驚です。人間って奥が深い。
判らない私がおかしいのかしら…。
実録2→→→[スポーツドリンクの悲劇]
その日、私は通っていた高校のジャンケン負け残りでやる羽目になった、県大会の高校紹介の行進の為、県庁所在地(これがまた寂れてるんだ。七時で既に大通りががっらがらになるんだ。二駅先の似た名前の市はやたら賑わってんのに)にある運動場(広い。競輪にも使われている)に来ていた。
同じように負け残ったクラスメートとの会話も、暑さのせいで低気圧。
他に同じように負け残った他学年の生徒達も『なんで休みの日にこんな目に』と言いたげにへたれている(なんて協力性のない学校)。
そしてその日程が終わり、帰る前教師からの注意やらを受けているとき、学校から生徒達へペットボトルのスポーツドリンクが配られた。
金取りケチ学校と日々呼んでいた高校のその計らいに私達は『おおっ珍しい』と思う反面喜んだ。
渡されたペットボトルを各自受け取り、それぞれにまた座る中。
受け取ったものを見て、一部の生徒や私自身「ん?」と思った。
色が薄茶色い。特に変な物が浮いているわけではないが、おかしい。
当時『○天』に異物混入のニュースがあったため、気になったはなったが喉がとてつもなく渇いている上、私はそれまでそのスポーツドリンクを飲んだことも、まともに見たこともなかった。
こんな色なのかなぁ。
と思いつつ、まぁいいや飲もうと口を開けたとき、一足先に口を開けていたクラスメートが、半分程飲んだあとで私に言う。
『なんか、…味変』
だったら半分も飲むなという突っ込みも入れたかったが、それより中身が気になって。
『じゃ、試しに一口』
と私も口を付けてみる。
普通のスポーツドリンクの類だと思っていたが。
『……変だね』
どうもそれとは違う味がする。
飲んだことはないが、変なのは判る。
首を傾げ、これ以上飲まない方がいいかなと蓋を閉め、バスの方へ向かおうとした矢先。
名も知らない生徒の一人が、これまた名も知らない生徒に向かって話しかける。
『………これ、賞味期限過ぎてる』
なぬっ!!!???
慌ててペットボトルの賞味期限表示を確認する私。
そこには。
1998年6月○日
ちなみに、その日は1999年の8月○日である。
めっちゃ超過。
何考えてるんだ学校。
しかも時既に遅い。
もう一口飲んだ。友人なぞ半分も飲んだ(先に気付け)。
腹壊すだけで済んだけど。よくニュースにならなかったなと、今頃に思う。
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