白石部長の実験@
注意:白石のキャラを無視したギャグです。





「………」
 その日、部活にやってきた謙也はそれを見上げて疑問符を浮かべた。
「…健二郎、あれなに?」
 中に入って、先に来ていた副部長に訊く。
 しかし彼も、同じく先に来ていた財前もわからないらしく首を横に振る。
「…白石ー」
「んー?」
 彼らしくない生返事。
 しかし、無理はない。
 その部長はなにやら釘を口にくわえ、台を足場に部室の扉の鴨居の下に更に板を接着しようと試みているのだ。
 これはなんなんだ、と訊かないでいられる人間は多分いない。
「つか、思い切り似合わへんなぁ…お前と釘とかなづち」
「そか?」
 ない。ないったらない。
 最強の聖書。西の最強プレイヤー。男女問わずモテる西の跡部景吾と言ってもいい美貌の白石蔵ノ介と、釘とかなづちという大工道具の組み合わせは、ないといったらない。
 千歳なら似合う。多分。
「で、なんやねんそれ」
「ええから気にせんで? 明日には外すし」
「え? お前いつからそれやってん?」
「俺が朝の六時半に来た時にはもうやってたわ」
「はぁ!? で、明日にはもう外すん!?
 いやずっとあったら迷惑やけど、なんでなん!?」
「俺の興味やもん。他の部員に迷惑かけたれん」
「……?」
 ますますわからない。
「そういえば、俺が来た時には半分接着終わってたから、俺、頭ぶつけたんや。
 あれに」
 丁度白石が釘取りに行ってていなくて、と語る小石川の額は見れば確かにうっすらと赤い。
「うっわ〜やから明日には外すて言うてんかなぁ?」
「いや、元から明日には外すつもりでやってたらしいけど」
 机を挟んで話し合う小石川たちの視界で、白石がやっと終わったのか下に降りて台を片付けている。
「せやけど、健二郎が? 珍しい」
「やって、普段これくらい下げたらぶつからへんってとこより低いんやもん。
 普通にいつもの癖でよく見ずに頭下げたらそらがつんていくわ」
 そこまで言ってから、小石川は無言になってその付け足された鴨居を見上げた。
「……………」
 財前も同じように見上げて無言になる。

「「ああ」」←なにかを察した声

「え? なに? なにが『ああ』なん?
 わからんの俺だけ?」
「…せやけど、タイミング悪く千歳部活休むかもしれへんし」
「いや、部長のことやからなんか餌にして必ず来る算段取り付けてんやないんですか?」
「ああ」
「え? え?」
 一人意味の分からない謙也を余所に、丁度そのタイミングで下駄の音。
「あ、おはようさぁがっ!?」
 扉を開けて頭をくぐらせようとした部内一の長身が、しかし小石川の体験通り、下げた高さが足りずに頭をがつん、と付け足された鴨居に思い切りぶつけた。
「…んー、計算通りや。んーん、絶頂――――――♪」
 それをしっかり目に収めた後、陶酔した部長に、小石川と財前は「ああ、やっぱり千歳が鴨居に頭ぶつけるのを一回でいいから見たかっただけか」と推測が間違っていないことを認識した。





「…白石、お前、ほんに無駄にアグレッシブよな」
 朝練後のSHRまでの休みに二組にやってきている千歳の額はうっすらと赤い。
「やって、お前どんな場所でもいちっっっども、ぶつけへんねん。
 つまらんやん」
「ばってん早起きして朝の六時に来てまでやることやなかろ!?」
「やって、部活の休憩時間は足りへんし、他の時間は部員の邪魔んなる」
「…俺はよかとか…?」
「たまにさっくり無視されるよな。千歳の人権は」
 もう傍観者のノリで突っ込む謙也が、持っていたキーホルダーをくるくる回す。
「それなん?」
「ああ、玩具の防犯ブザー。
 つかわんから金ちゃんにやろかって」
「それ、必要なん金ちゃんに襲われる方やなかとか…?」
 千歳が突っ込んだ時、登校してきた男子生徒数人が、びっくりしたーと騒ぐ声が耳に入った。
「さっきびびったやんなー。
 テニス部の部室の前通った瞬間なんやもん」
「なぁ」
「…おい、どないしたん?」

『テニス部の部室を通った』というキーワードが引っかかって謙也が訊く。
「ああ、それがさっき、バスケ部の部室から帰る時にな?
 テニス部の部室が途中にあるやんか。そこ通った瞬間、持ってた防犯ブザーがなんもしてへんのにビビビビビビビ!って鳴って」
「びっくりしたー」

「………おい、白石」
「白石」
 謙也と千歳、二人が言わずとも訴えることを理解したらしい。
 白石が、「昼休みに速攻外すわ」と答えた。








 うちの白石は何故アホな方向に行かせると無駄に生き生きするんでしょうか…。
 というか「西の跡部」はギャグノリです。深い意味はありません。強いて言うなら諏訪部さんが100曲マラソンで「絶頂」と言ったかr