「しっかし、なに飲ませたん?」
論議した結果、こんな白石は早々拝めないから、と少し観察することにした。
一人反対した千歳を余所に、美鳥が一氏に訊いた。
「罰ゲームの適割り水割りです」
「てきわり…?」
なにそれ?という顔をした美鳥に、小春が「適当に割った水割り」と説明した。
「割ったん誰?」
「この千歳」
「千歳くん、どんくらいの割合?」
「…………、水:酒で3:7…いや2:8…?」
一瞬嫌な顔をした後、千歳が一応歳を立てたのか素直に答える。
全員が、「まずいだろその割合!」という反応をする。
「先輩ー。最近学校遊びに来はらないやないですかーつまんないですー」
酔った白石は取り敢えず、全ての語尾を伸ばすらしい。
美鳥だけが気にせず、「とりあえず言葉若干おかしかったからな?」と突っ込む。
「つか、暇はないやん。白石ちゃんたち今大変やろ?」
「なんもやることないですよ?」
「うん、そらキミは部活のうなったら暇やろな…やなくて、受験あるやん?」
「受験ー? 俺、ぜんっぜん勉強しなくっても大抵の学校主席で受かりますってー勉強いらんですー」
「うんうん素敵に世界を馬鹿にした発言や。『世間』や『社会』を馬鹿にしてんやのうて『世間の他の頭普通な人間』を馬鹿にした発言な。そういや酔うと白石ちゃん若干図に乗るんやったわ。あくまでホンマの実力の範囲で」
せやから自意識過剰やないんやけど、逆にむかつくって話で。と美鳥。
「ホンマですわ…こいつ、さらっと受験に勉強いらんとかほざいた。
しかもそれで大抵の学校の総代とれるとか言うた…」
「その実力が実際にホンマに備わってる人間に言われると妙に腹立つな…なんやこれ」
「あれやろ、跡部景吾を最初に見た侑士の気持ち?」
一氏、小石川、謙也の順番で並んだ台詞に、財前が「どんな気持ちです?」と突っ込んだ。謙也の言い分に。
「え? 最初に跡部が部活ジャックしたから挑んで負けて、その後成績、運動至ることで差をつけられてそれを『俺を誰だと思ってやがる? 跡部景吾を他の凡才と一緒にすんじゃねえよ』と笑われた時の気持ちやな。
ものっそう殴りたいし腹立つんやけど、一個も勝てないししかも実際それが事実やから負け惜しみも言えへんという…なんやろ、…うーん」
「いえ、大体わかりました。今ので、はい、大体」
「そか」
「白石って、酔うと案外『俺様』キャラなんやー……」
「つか、普段から爽やかなだけで根本は『俺様』キャラじゃなかね?
自分大好きチーム大好きな絶頂超ドS部長。
で、それが自分には許されてるって自負しとって、実際事実ってやつ」
「…実感籠もってはりますね、千歳先輩」
最近それやられたばっかりやからか、と財前が呟いた。
先輩たちが帰ったあと、一人置いていかれた形の潰れた白石を寝台に寝かせる。
小さく呻いて、白石が瞼を開けた。
「あ、気分どうばい? なんか飲むと?」
「…? せんぱい?」
「…違かよ」
でも、面白くない。
そのまま寝台に押さえつけて、ぶつけるようにキスを仕掛けた。
一瞬苦しそうにした身体が、すぐ手を首に回して応えてくる。
「……ん…ん…っ」
腰に響く甘い声に、少し口を離すと赤く染まった顔が見上げてきた。
「しらいし?」
「……せんぱ…?」
焦点の定まらない瞳。呼ぶ声に苛立った。違う。どす黒い嫉妬だ。
何故、キスに応えておきながら俺を「先輩」だなんて。
「…っ…ん…ん…っ!」
もう呼べないよう、もう一度唇を塞いで深く貪る。
そのまま降ろした手で、ベルトを抜き取り、ズボンを足から抜き取った。
「…ん…っ…!」
びくんと跳ねた身体を押さえつけ、手に取ったジェルをそこに塗り込める。
「…ぁ…や…っ! せん…っ」
「違うばい…」
息も荒く否定して、そのまま深く貫いた。
苦しげに息を吐く白石が、甘えるように手を伸ばしてきた。
また間違っているのかと胸が苦しくなる。
顔を歪めた千歳を見上げて、白石が不意に少し辛そうに笑った。
「千歳?」
「……ぇ?」
「動かんでええん? 辛くないん?」
「…今、なんて」
「…千歳」
ぽかんとする千歳の頬を撫でて、白石がとびきり綺麗に微笑む。
「流石に、お前まで間違えんで?」
「……っ、演技たいね? 今までの…!」
繋がったまま、それもあって苦しげな千歳の顔にキスをして、白石が小さく笑った。
「お前以外は先輩に見えてた。これはホンマ」
「……全く、…ほんにお前は……」
苦笑して、やられたと息を吐いて、キスをして動き始めると、すぐあがる悲鳴のような声。
でも、本当に、敵わない。
「結局、白石ってさ」
「ん?」
「…あのまんま、千歳に…食われても千歳のこと『先輩』?」
「…かもな」
「…千歳がキレる…」
思わず震えた謙也を、なんであんたが脅えるんですかと財前が突っ込む。
小石川は、わからんとフォローしてみた。
END
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