非日常のHOLYDAY GAME


 全国大会前の、全国大会出場校による、無人島でのサバイバル合宿。
 危機的状況で精神を鍛えるという目的のもと、招集されたメンバーを乗せた船が嵐で座礁し、ボートで脱出したメンバーがたどり着いたのは目的地の島。
 だが、どこではぐれたのか、顧問たちの行方が知れないまま遭難一日目の夜になった。







HOLYDAY GAME






「大丈夫なんかなぁ」
 謙也がぼやいた言葉に、白石が反応して、なにいうてんと返す。
「俺らよか、完全巻き込まれの小日向さんと辻本さんが大丈夫かって話やろ?」
「あ、そやなぁ」
 小日向つぐみと辻本彩夏。偶然船に乗り合わせた船長の娘とその友人だ。
 海側と山側にわけた二チームの中央のロッジ、管理小屋に部屋を与えられた彼女たちは自分たちを手伝ってくれるが。
「特に小日向なんか大変なんやないですか? 先生方と一緒に行方不明になった船長さん、…父親が心配で、落ち込んどりましたやん?」
 財前が言外になのに謙也クンが不安を煽るな、と言う。
「すまん」
「まあ、俺らは探すことに頑張るしかできんけどな。
 とにかくは目先の食料、燃料調達やろ?
 救難信号は出てる筈やから遅くても二週間経てば救助は来るし。
 あと、先生たちがこの島に来とるんは間違いないし」
「まあ、そやな」
「手塚さんも先生たちの捜索も明日からって言ってましたやろ?」
「うん」
「それに夜は遠山が絶対うるさいし。安眠の心配したった方がええ」
「…そやな」
 ほな、俺ロッジ戻るわ。と謙也が出ていくロッジは千歳・白石・財前・金太郎のロッジで、謙也は氷帝の忍足侑士と同室だ。石田、小春、一氏は海側なのでそもそもこちら側ではない。
「ちゅーか、むしろセンセの方が心配や」
 謙也がいなくなってから白石が言った。心配性の謙也を気遣って黙っていたのだろう。
「ですねぇ」
 他の顧問連中に比べれば格段に若いのに、何故か不健康な自分たちの顧問。
「ほっとくと、マジで渡邊先生生きとるか怪しいですよね」
「生きる力は確実に青学のセンセとかの方が上ちゃうん?」
「それには同感しますわ」
 二段ベッドの二階でだらんと腕を落としながら財前が真顔で頷いた。
 片方の手には持参した推理小説がぶら下がっている(財前は推理小説をよく読む。しかし全く推理をしないタイプで、なので一度彼が中古で買った小説の途中で「犯人こいつ」の落書きに怒った時、白石たちは「一応犯人が誰か楽しみに読みたいタイプやったんか…」と驚いたものだ)
 そこでからんと下駄の音とともに千歳が帰ってきた。
 彼は不動峰の橘のところに行くと少し前にロッジを後にしていた。
「おう、再会の挨拶は済んだん?」
「そげんもんは船ん中で済ませたと。今日は桔平の後輩に挨拶と紹介してもらってきたと。
 覚えとかんと失礼やけん」
「ああ、絶対あんた毎日のように会いに行くでしょうしね」
「そしたらなんでん、えー、シンジ?くんって子にえらい睨まれたと。
 なんでかね?」
「シンジ…?」
「伊武くんか?」
「ああ、確かそげん名前」
 桔平はそう呼んどったと。
「あー、あのぼやき」
「こら財前」
「事実ですやん?」
 で、理由明白?と呟いた後輩に白石がどういう意味?と伺った。
 その横で千歳が財前が中途半端に開いてぶら下げている小説を引っ張った。
「なにすんねんあんた…。ああ、あのぼやき、どうせ不動峰の部長が好きなんやないんですか?
 そのぼやきとしては、その部長の親友は邪魔でしょ」
「名前で呼んだれ。…まあ、伊武くんが橘くんを好きなら、確かに千歳は邪魔やんな」
「え? 俺、そげん理由で敵視されちょっと?」
「“そげん理由”…ね」
「なんね光」
「ほな、千歳先輩は白石部長にどんな馬の骨が現れても“そげん理由”って溜息つけるんや? へーぇ?」
 本をようやくベッドの上に引き上げて、続きを読みながらの後輩の言葉に千歳は一瞬沈黙。
「って、それは話が違うたい!」
「同じですわ」
「とにかく、白石に近づく虫は例え桔平でも許さんと!」
「はいはい。それで先輩が余計な火種つくらんよう気ぃつけてくださいね。部長」
「俺に丸投げすんなー」
 そこに越前のロッジに行っていた金太郎が戻ってくる。
 消灯時間やしねよか、という白石の言葉に従ってベッドに潜り込む。
 狭かーという声が下のベッドで響いた。






 コンコン と鳴るノックに、最初に顔を上げたのは木手だった。
「?」
「誰さ?」
「辻本じゃん?」
 甲斐と平古場が、つか他にいないだろ、とベッドに横になったまま言った。
「なんですか、辻本くん」
 だが、扉の向こうからは沈黙しか帰らない。
「辻本くん?」
 返事は、矢張りない。
 本格的にいぶかしんだ木手が立ち上がると、警戒を含んで呼んだ。
「…誰ですか?」
 辻本くんじゃありませんね? その声に並ぶように甲斐と平古場も起きあがって身構える。
 扉が開くとそこにいたのは、山側のリーダー。
「…手塚くん…?」
「なんで手塚」
「夜分すまないな。少し、話がある」
「…跡部くんではなく、キミが?」
「お前達の独断は聞いている」
「ああ、跡部くんの話を俺達が聞かないから、キミからもお説教ですか?」
「……どうとっても構わない。だが話くらいは聞いてくれ」
「…、いいでしょう。ここでするのはフェアじゃありませんね。
 外に行きましょうか」
「木手」
「大丈夫ですよ。手塚みたいな人間が、俺に勝てると?」
「…そうだな」
 でも気をつけろよ、という甲斐たちに見送られた先、扉は閉まった。




 歩いてきたのは山側と海側の中腹。
 森の中だ。
「で? 結局なんだと?」
「俺達を敵と見なすのは、悪いことではない。
 なれ合いがいいとは俺も言わない」
「なら?」
「だが、今はまだ大会前だ。むやみな挑発もまた意味はない」
「挑発?」
「跡部から聞いている。しらばっくれるな。
 六角にことあるごとに絡んでいると聞いた」
「…彼は、随分お節介ですね」
「なにが気に入らないのか知らないが、干渉を拒むなら、他校への過ぎた干渉は控えろ。
 お前達だって、好きこのんで諍いたいわけではないだろう」
「…さあ」
「木手」
「どうでしょうね? 案外そうかもしれませんよ?」
「木手、はぐらかすな!」
「まさか。本心です。
 敵との諍いはいわば味方との結束の強化です。共通の敵というヤツですね。
 それを今から作っておくのも一興では?」
「…」
 睨むように見つめてきた手塚に、木手は笑うと、話が以上なら帰りますと踵を返す。
「待て! それは本心なのか!?」
「本心ですよ」
「何故だ。何故そう全てを敵にする。お前のやり方には不信感が過ぎる」
「お説教ならよしてください」
「木手! お前は主将だろう!」
 足早に去ろうとした木手の手首を手塚の手が強く掴んだ。
 力の強さに顔をしかめた木手が、反論を口に仕掛けて不意にバランスを崩した。
「わっ…」

 大きな音がその場に響いた。

 なにかが自分の上にのしかかっている。ああ、手塚だ。
 でも、なにかが口に触れて。
「……」
 瞳を開いて、しばらく視線が絡んだが言葉はお互いに出なかった。
 言葉を発する筈の唇は、その瞬間確かに重なっていて。
「…っ…!?」
 咄嗟に飛び起きたのは同時だった。
「……あ、」
 手塚も予想外の事態に、視線を迷わせると、それでも真顔になって立ち上がる。
「立てるか」
「…」
 差し出された手を振り払って立った。
「なれ合いはいらない、とキミが言ったんですよ」
「…ああ、だが、さっきはすまなかった」
「は?」
「…事故とはいえ」
 それが不慮の口付けを指しているとわかって、木手は一瞬顔を染めてしまう。
「あんなもの、事故以外のなにものでもないでしょう。
 もう山側へ帰ったらどうです」
「ああ」
「…もう、来ないでください」
「…お前が、人の話を聞くならな」
「……」




「あ、木手! 大丈夫だったか?」
 ロッジに戻ると甲斐が出迎えた。
「ええ。別になにも」
「そっか。まあ、木手が俺達以外にどうにかなるとか本気で思わねえけどさ」
「つか、俺達ですらどうにもなんないだろ」
「うっさい凛」
「…永四郎?」
「いえ」
 重なった感触が、鬱陶しくすらある。
(事故だ。ただの、事故…)
 なのに、見つめる視線が真剣で。
 忘れようと首を振っても、離れないビジョン。
 せめて名前も知らないなら、簡単に忘れてしまえるのに。





「では、今朝はまずこの合宿所近辺の地形を把握しておくんだ」
 翌朝、山側で手塚の声を聞きながら、千歳が派手に欠伸をした。
「千歳先輩、口」
「あ、ああ、すまん」
「いえ、するんやったら口押さえてください。マナーっすわ」
「あ、すまん」
「それで、今回の探索だが、今日は河村、海堂、向日、柳生、千歳、忍足に頼む」
「ああ、わかった」
「おう」
「……待ってや手塚」
「なんだ?」
 手を挙げたのは忍足侑士だった。
「今の、俺? 謙也?」
 そこで手塚も、忍足が二人いることに気付いたらしい。
「…忍足謙也の方だ」
「ああ、そっか。ややこしなぁ」
「俺らのどっちか、海か山で別れた方がよかったわな」
「それは俺のミスだな」
「いや、手塚くんの所為ちゃうから」
「あ、白石! 探索一緒にいかんね?」
「阿呆か。違う場所を調べなあかんやろ」
「いや、今回、千歳の場所は少々ややこしい。出来るなら二人が望ましいが、白石、千歳に同行を頼めるか」
「ああ、そういうことやったら」
「すまん。
 それから、山歩きのコツを教えておこう。
 作業ともなれば、山道を歩くことも多くなるからな。
 まずは足の裏全体を使って歩くこと。そうしないと靴擦れを起こす。
 そしてもう一つ、歩幅を狭くすることだ。
 歩幅を広くすると身体のバランスが崩れやすい」
「ふうん」
 赤也が暢気に呟く。
「では今言った点に注意して各自作業にかかってくれ」
 了解の声があちこちであがる。
「だが、その前に」
「え?」
「千歳。お前に話がある」
 名指しで呼ばれて、千歳は首を傾げた。
 解散しかけた他のメンバーも二人を凝視した。
「お前は、即刻テニスシューズに履き替えてこい」
「…え? なんでん?」
「なんでではない。お前、山を歩くのに下駄で歩くつもりか。
 登山の心得をなんだと思っている」
「…いや、手塚、今回は登山じゃなかね」
「そんなことはどうでもいい。とにかく、山歩きに下駄など言語道断だ。
 もしそのまま下駄で探索を行ってみろ」
「……どげんすると?」
「練習時間を減らすぞ」
「…う」
「千歳、手塚のいうことは正しいぞ。履き替えてこい」
「桔平まで手塚の味方すると?」
「いや、どう考えたかて、下駄で山歩きは非常識や」
「白石まで」
「諦めたらどないですか先輩」
「…光まで」
「だいたい、山道は凹凸が激しい。そんな場所を下駄などで歩いたらいつ足をくじくか」
「いや、俺ば下駄の方が早く走れるし」
「危険の問題だ」
「……」
 沈黙した千歳は周囲を見渡す。全員同意見だ、という視線だ。
「……わかった」
「ならいい」
「そっかり」
「ん?」
「俺ばちゃんと履き替えたら、手塚、ミユキにおめでとうって言ってやってくれんね?」
「え? ミユキ? なに、手塚に女…!?」
 菊丸が小声で桃城に言う。
「………」
 手塚はしばらく視線を固定して、それから。
「待て、何故お前が彼女を知っている」
「……取り敢えずミユキのことば覚えちょるとね?」
「ああ」
「ああ、俺はあん時会っとらんから…。手塚、けんどミユキの名前ば聞いたとやろ?」
「ミユキ、だろう?」
「……名字は?」
「…………聞いていないな、そういえば」
「千歳ミユキいうと」
「…千歳?」
「俺の妹たいっ」
「……ああ。そうなのか」
「なんだ…千歳さんの妹か」
「え、でもさ、一個違いとかだったら…充分、手塚に恋の予感じゃない?」
「あ、そうっすね」
「桃、英二、よさないか」
 大石が二人の小声を止めた先、手塚が仕方ないと頷いた。
「わかった。会ったら言おう。だから、お前もちゃんと履き替えろ」
「わかったと」
「では解散!」




「あ、白石!」
「あ、向日くん?」
 意外な人物から声がかかって、白石は作業の手を止めた。
「なん?」
「いやさ、侑士見てね?」
「侑士? ああ、さっき見たで」
「ほんと? どこ行った?」
「ああ、」
 その横で謙也に宍戸が中断させて悪い、と言っている。
 白石はロッジの方面を指さして。
「あっちをガーッっていって右ドカーンって行ったとこや、多分」
「……待て、なんだその擬音混じりの説明」
「え?」
「…普通に擬音混じってたぞ。おし…」
「謙也でええよ?」
「謙也、大阪人の説明は普通じゃねえって本当だったのか!?」
「ああ、道案内で擬音混ぜんヤツの方が少ないんやない?
 道案内も『ここガーって行ったらつきますよ』やもん」
「…いや、変だろ」
「つか、侑士はそんな説明したことねえ」
「侑士はあれは転校多いから。学んでんやない?」
「と、とにかくロッジの方角なんだな?」
「そう」
「ええと、…がーっと…」
「岳人そんなことはあてにすんな。とにかく邪魔したな」
「おう」
 白石がひらひらと手を振った先、宍戸と向日の背中が遠くなっていく。
「侑士、意外とうまくやってんやな」
「そうやな」
 最後の薪を割った謙也の言葉に、白石が頷いて、ほな運ぼうと集める。
「そういや、千歳は?」
「あいつは橘くんとこやないの?」
「ああ、…光と金ちゃんは?」
「財前は切原くんとこちゃうん? 意外と話合うみたいやし」
「ほな、金ちゃんは越前とこか」
「やろ」
「ああ、白石」
 かかった声に顔を上げる。
「手塚くん?」
「いいか?」
「ええよ?」
「ほな白石、俺が薪運んどくわ」
「ああ、すまんな謙也」
 謙也の足音がすぐ聞こえなくなって、向き直ると手塚は地図を片手にここなんだが、と切り出した。
「お前たちの探索地点だが、道が少々わかりにくいらしい」
「よう知っとんな」
「跡部が多少知っていたのを聞いただけだ」
「そか」
「それで、通るのは舗装された道にしてくれ。道に間違えられる場所があるらしいが、そっちには行くな。なにがあるかわからない」
「ああ、わかった。千歳にも言うとく」
「ああ、頼む。すまなかったな」
「ううん」
 ほなな、と手を振って別れる。
 ロッジに戻る途中、木陰で本を読む柳を見かけて、らしいと思っただけだった。




「おーい日吉」
「あ、切原か」
 水くみを終えて戻ってきた日吉を待っていたのは赤也だった。
「なんだ?」
「柳さん見てね?」
「今俺は水くみから帰ってきたばかりだ」
「だから、その途中で見なかった?」
「見てないな」
「そっか…」
 どこ行ったんだろ。
「柳くんなら、さっき管理小屋の傍の木陰におったけど」
「ホントっすか!?」
「うん。今も移動してないならな」
「ありがとございます! あ、っと、白石さん」
「今気付いたん…」
「いえ、あんまよく見てなくて。じゃ、行ってみまっす!」
「おう」
「ああ、白石さん」
 赤也が去った後、日吉が思いだした、と口を開く。
「なんや?」
「あの、白石さんとこの、一年。どうにかなりません?」
「…金太郎? なんかやったんか?」
「いえ、俺が古武術やってるって誰から聞いたのか、勝負しろってずっと」
「…すまん、探して即やめさせるわ」
「そうしてください。頼みます」
「うん、ごめん」
「じゃ、それだけですから」





 そろり、と近づくと確かに白石の言うとおり。
 管理小屋の傍の木。幹に背中を預けて本を読んでいるのは確かに柳だ。
「や」
「なんだ、赤也」
 先に気付かれて呼ばれた。ぱたん、と本を閉じてしまった柳に、気まずさを感じつつ、前まで行く。
「邪魔しちゃいました?」
「いや、ちょうどキリがいいからやめようと思っていただけだ。
 なんだ?」
「いえ、なんつーか、…部屋、別なんで」
「お前はよかっただろう?」
「どこがっスか!?」
「弦一郎と一緒なのが?」
「そうです」
「だが、仁王とは離れてよかっただろう? 一緒の部屋だと、寝起きの悪さを理由にまた変な落書きされてもフォロー出来ない」
「…ああ、ありましたよね。合宿で、ニオ先輩、俺の顔に肉って」
「しかも油性だったからな」
「あの後大変だったっス。同じ二年のみんなには笑われるし、特に丸井先輩なんかひでーし」
「合宿所では、女物の化粧落としなどないしな」
「女物の?」
「油性はそれだとよく落ちるらしいぞ。貞治が言っていた」
「乾さんが。よく知ってましたね」
「貞治も部室で居眠りをしてされたらしいからな。額に油性で肉」
「…ぶっ」
「赤也」
「はーい。…柳さん、なんか嬉しそうっスよね」
「それはそうだ、データの宝庫だからな」
「あと、乾さんがいるからじゃ、ないですか?」
「それもある」
「……俺は眼中かよ」
 ぼそりとつっこむと、なんだ?と伺われた。いいえ、としらばっくれる。
「一応、お前も視野にいれているが? いろいろな意味でほおっておけん」
「…聞こえてんじゃないですか。意地悪」
「俺が地獄耳なのは知っていよう?」
「副部長がそうだってこと以外忘れてました」
「そうか」
「………放っておけないだけですか?」
 昼間から取り残された昼前。木々の下の、つかの間の暗闇。
 頭上から降った声に顔を上げる。
「…相変わらず、そういう“対等”じゃねー後輩扱いですか」
「…………赤也」
「…………」
 柳は不意に笑った。そうだな、と。
「後輩だ、大事な、な」
「…やっぱ、意地悪」
「知っている」
「…も、行きます。もうすぐ昼飯ですよ」
 ああ、という声は背中で聞いただろう。赤也は既に背を向けていた。
「今のは、かなり意地悪だぞ」
「ああ、貞治、聞いていたか」
「知ってたくせに」
「……ああ、俺はひどい先輩なんだ」
「……先輩ぶっていられるうちが、いいと思うけどね」
 その乾の言葉に、心の中で知っている、と返した。





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