※とりあえず千蔵がバカップルですいません。
注意:会話がセクハラです。




「ちょっと、愚問なこと聞いてええスか?」
 朝練開始前、部室で財前がそう言った。
「なんや?」
「や、部長と千歳先輩がラブラブなんはもうええんで。一個」
「ええなら聞くな。あと部室でそういう言い方すな」
 白石に柔らかく頭を叩かれても、撫でられているのと一緒だ。
 白石は決して暴力を使わない。
「あんたらが最初にセックスした時、部長が下んなったんは話し合いの結果?
 むしろ話し合いすらなくなし崩し?」
「お前、朝練前になんちゅーこと聞くんや……」
 白石は随分呆れていた様子だったが、今の部室にはレギュラーしかいないので前もあともない。
「…一応話し合ったで?」

(あ、素直に答えるんや)←千歳以外の心の声

「話し合いが成立したんですか? あんたとあの人の体格差で?」
「…そない驚くなや…失礼な。
 一応、どっちがよか程度は聞かれたで?」
「で、なんて?」
「上がええて言ったら『好きな時に好きなだけ部屋に居座っていいから下で我慢して』て言われたから『ほな下でええ』て」
「……貞操より部屋とったんスかあんた…!?」
「やって居座り放題は魅力やろ。中学生には」
「……熱意薄いなこの人……。千歳先輩、そんなんでええんスか」
「いやぁ…上やなかなら一生セックスせんて言い張られるよかよかよ?」
 それにどう頑張ったって白石は下やろ、俺のこつ持ち上げられんし、と言う。
「…まあ、持ち上げられない人間を抱くのは無理ありますからその通りですけど…。
 …あんた、もしかして聞いたの礼儀だけだったりします?」
「礼儀だけたいね。白石は無視してなし崩しで決まると後々文句言いそうやったけん」
「本人の前で言うなやこら」
「ちゅーか、朝練前から部長がそない話せんでくれ……」
 なかなか来ない部長を迎えに来た小石川がいつの間にか扉の前にいて死にそうな顔でそう言った。




「ほな、今日はシングルスメイン。
 Aコート、俺と千歳。Bコート、金ちゃんと財前。C―――――――――――――」
「部長! 口…っ!」
「…は?」
 なにが?という顔で唐突に叫んだ部員を見た白石を、傍で気付いた小石川が慌てて駆け寄ってしーっと青ざめて合図する。
「健二郎…?」
「ええから黙れ! 口が切れとるってお前! 血が…!」
「……あ」
 気付くと唇が思い切りぱか、と切れていてジャージに少し血が落ちていた。
 医者にかかるほどではないが、ちょっと口切れたで済ますには程度が酷い。
「あとは俺が言うから! お前口閉じとけ!」
「……うん」
 いやいいと言うつもりでいたが、ふと見遣った部員の群が全員なんとも言えないような、集団葬式の顔で青ざめていたので言うことを聞くことにした。



「すごかったっスわ。部長の口切れた瞬間のみんな」
「まんま集団葬式やったもんな…」
 休憩の時間に謙也と財前がそう言いながら水飲み場で顔を洗っている。
「俺がなんやねん」
「うわ白石! 話すな!」
「…大丈夫やて。血は止まったし」
「…ほんまや。…ここか?」
 唇の一部を指さす謙也に、うんと頷く。
「朝練前には切れてたってことやんな?」
「うん。昨日うっかりかみ切ってしもて」
「なんでかみ切るようなことになんねん」
「いや、唇かみしめてたらそのままぶち、て」
「うわ怖い! 怖い! 言うな!」
「ちゅーか、なんでかみしめとったんですか?」
「あー…聞く?」
「聞いてええことなら」
「俺は聞きたないっ」
「昨日、俺ん家に千歳が来てな?
 家族おらんかったからあいつがコトに及んだんやけど、途中で帰ってきて、声我慢してたらぶち、て」
「…全面的にあの人の所為スか」
「大体な」
「千歳は…ようも白石を傷物に」
「俺がなんね、つか既に傷物やろ」
「お前の所為でな」
 今はテニスシューズなので下駄のウルサイ音がしないまま、千歳が背後に立っている。
「つか、そげん酷かの? 昨日の」
「お前も見たやろあの瞬間」
 ふーん、と覗き込んだ千歳が両手でわし、と白石の顔を掴んでまじまじと傷を見る。
「…そのまま引っ張んなや? 痛いしまた開くから」
「…せんけど。…痛そうたいね」
「痛いんやて実際」
「じゃ、もう一回聞くけん。白石、上と下交代したか?」
「それ、上になったら部屋居座りなくなる?」
「なるな」
「ほな下のまんまでええし。ちゅーか極論、お前が喘いでんのなんか想像だけできもくて死ねるっちゅーの。そんなきもいもん見たくないから喘ぐのは俺でええはい終了」
「白石なら可愛かのに」
「俺とお前を比べんな。てか手は離せ」
「はいはい。ばってん、するんはもう俺の部屋だけにしよな。俺も怖か」
「そうしろ」
 手を顔から離されて、白石がさっさと水飲み場を後にする。
「俺らを忘れて会話すんなこのバカップル」
「忘れてなかけん…」
「どうスかねぇ…。つか、あんた的にどやったんですか?」
「なにが?」
「突っ込んでた時に部長の口がぶち、て切れて血が出たんでしょ?
 抜きました? 一旦」
「…そのままヤった」
「うわ、鬼や鬼」
「イってなかったしあれで抜くんは無理ばい」
「部長可哀相ー。…なに赤くなってん謙也くん」
「誰の所為や!」








 すいません。オチなし(汗)



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